
【コール音三回】
アナタが水を望むならワタシは水を授けましょう
アナタが食べ物を望むならワタシは食べ物を授けましょう
アナタが幸せを望むならワタシは幸せを授けましょう
アナタが 、を望むならワタシはそれを授けましょう
こういう時は決まって孤独感を突きつけられた
高校の入学祝いで両親に買ってもらった携帯電話は
未だに両親以外のメモリーなど登録されていない。
よく芸能人がテレビで「私のメモリーは300件ぐらいはいってます」
などとどれほど己に友達が多いかを自慢でもするかのように言ってみせるが
正直、私はあれを嘘だと思っている。
300件のメモリーと300人の友人達。
そんな大人数の友達と平等にコミュニケーションが図れるほど
人間は器用じゃないと思っているからだ。
私はため息を一つ溢して携帯電話を拾いあげてみせる
着信音に設定されたのは今流行…確かテレビで100万件着うたダウンロード達成とか言っていたから
私は流行っているのだと思うアーティストのものだった。
その歌が着信音として響いた事はないのだが、CD代わりにデーターフォルダより視聴しているとなんだか
心が安らぐように感じるのだ。
歌詞もメロディーも悪くない。
流行っているといわれれば納得できるような代物。
音楽には人の感情をコントロールする力がある…
……などとこれもテレビのアナウンサーらしき男が言っていた言葉だった。
私はそんな事をぼんやりと考えながら携帯電話を握り締める
その時。
♪〜♪〜♪〜。
初めて…わたしのモノになってから携帯電話が着信音としてメロディーを響かせた。
両親からだろうか…それが一番可能性としては高いと思う。
でも本日両親は二人とも仕事が休みで、一階のリビングにいるのにわざわざ電話をしてくるとうのもおかしな話だ
どく…どく…どく
血液を送り込む心臓の動きが激しく活動をしているのがよくわかる
誰?誰?誰なの?
その質問に答える声などなく…目の前の携帯電話だけがそれを知っていた。
急かせるように激しく点滅を繰り返すイルミネーション。
ブーブーブーと短く振動音を響かせるバイブレーション。
そしてCDの代わりにいつも聞いていた聞きなれたメロディー。
携帯電話を持つ手ががくがくと震える中、思考だけが急速にぐるぐると目まぐるしく回る。
意を決して二つ折りにされた携帯電話を開いてその番号を確認した。
知らない番号…当然といえば当然だ。
この携帯に両親以外のメモリーなどははいっていない。
だから両親以外の番号は私の知らない番号になる…それはあたりまえの事。
出るべきなのか…出ないべきなのか…こういう直面に出くわしたことがない私はただ迷うだけ
随分と長い間メロディーは鳴りつづけていた。
それほど重要な電話なのだろうか?
もし…知らない男の人からの気持ち悪い電話だったら即効切ってしまおう。
それからその番号は着信拒否にしてしまえばいい
もし…間違え電話だったら優しく間違えだということを諭してやらなければならない。
もし…
もし…
もし…
そんなことを考えていると携帯のメロディーが止みそうな気配がした
確信などはないがそんな気がしたのだからしょうがない。
もうこうなればヤケにも近い感覚だ。
私は勢いよく通話ボタンを押して受話器をそっと耳に当てた。
どんな声が聞こえてくるかなどと想像している暇さえなく…私は胸の高鳴る音を抑えることなど出来ない
……………。
時間にしては数十秒といった時間だったに違いないのだが
私にはその時間が一時以上の長い時間にすら感じた。
恐る恐る喉の奥から声を絞り出そうと試みる。
「…も、し「ぅぐぅ…ひっく…」
私の声を打ち消すかのように相手の声が耳へと届いた。
泣いていた…
それは私とそんなに年は変わらないであろ女の子のものだった。
「うぅ…ごめっ…ごめんね…あたしが…悪かったの…」
嗚咽まじりの泣き声で何度も謝罪の言葉を口にする女の子
どうしていいのかわからない
大丈夫?と声を掛けるべきなのか…あなた誰?と先に問うべきなのか
「…いいよ。もう怒ってないから」
咄嗟に出たのは…相手を気遣う言葉でも、電話の向こうが誰なのかを問う言葉ではなかった
『いいよ。もう怒ってないから』
どうしてそんな言葉を口にしたのか自分でもよくわからない。
ただ…言葉が零れ落ちたのだ。
アナタを許す…と電話の向こうの誰かも知らない相手を許すと…
「…本当?もう、怒ってないの?」
「うん。怒ってないよ…」
電話の相手の女の子の声が徐々に明るくなっていくのを私は感じた。
誰を何を私は……………許すというのか
「よかった!じゃあ!また明日も電話するね!絶対だよ」
「うん。わかった」
私の返事に満足した女の子は明日も電話をすると残して電話を切ってしまッた
なんて事をいっていまったのだろうか!!
私は彼女の希望した電話相手ではなかったのに…
あの時何故あのような言葉が零れてしまったのか自分でも理解不能だ
どうしよう…どうしよう…
先程とはまた違った感情に思考がフル回転していた。
あの子は明日も電話すると言っていたことを思い出す。
だったら明日誤解を解こう!今ならきっとまだ間に合う…
またあの子は泣いてしまうかもしれない…それならばいっそのこと嘘をつき続けてあげた方が
…優しいのではないか??
ツーツーツー
受話器が切られ通話が終了した合図の音だけが響く中。
私は…後悔という言葉に苛まれていた
続きが書けるもんならいつか書きたい創作(独り言)